トランプショック!
しかし、そのお祭りムードが一転したのは、現地時間11月9日朝6時半ごろだっただろうか。私もそろそろ交渉3日目をスタートしようとしていたころ、各メディアで次期アメリカ大統領にトランプ氏が選出されたとの一報が伝えられ、驚きを隠せなかった。実際に会議場に到着してみると、交渉の雰囲気に暗雲が立ち込めた。いわゆるトランプショックである。氏は選挙戦を通じてパリ協定からの脱退を明言してきたことを受け、「米国主導で合意に漕ぎつけたパリ協定はこれで終わった」といった懸念が多く述べられた。「パリ協定から脱退するにもルール上4年かかる」、といった意見や、「条約そのものから離脱すれば1年で脱退できる」という案を挙げて危機感を煽る意見も多く聞かれた。当日は、その懸念を表すかのように、米国の代表団も緊急会議を開き、毎朝行う協議にも悉く遅れて参加することになった。しかし、「このCOPはまだオバマ政権下での会議」であることに加え、2週目にケリー国務長官が登壇し、米国の変わらぬコミットメントを述べたことから、COP22の交渉においては、変わらず前向きな米国を演出できたようだ。ただ、実際には来年以降にスタートする各委員会へのメンバーの選出を辞退したり、支援についても「今年中の執行については予定度折る」という条件を付けたりして混乱があることも示していた。私は米国のパリ協定からの脱退はさほど心配していないが、Green Climate Fund (GCF)や「年間1000億ドルの支援」を謳う長期資金に対し、トランプ政権が支援をストップすることで、実質的に2020年までのさらなる行動やパリ協定の実施へのサポートが滞ることを懸念している。「パリ協定はビジネスにも大きなチャンスを開く」という点に着目して、現実的な対策をとってくれることを願う。