Kunihiko Shimada Official Blog 国際交渉人 島田 久仁彦公式ブログ

COP22とはどのような会議だったのか(3)

日本のパリ協定批准遅れは本当に致命的だったのか?

 

「パリ協定の批准が遅れ、2020年以降のルール作りに日本は参加できない。」

そのようなショッキングなニュースがCOP22前には飛び交い、産業界からも懸念が述べられた。

結論から言うと、実際には懸念していたような事態は回避された。締約国も条約事務局もまだルール作りの議論に入る準備が出来ていなかったことと、「締約国・非締約国の間に参加上の差を設けない」(事務局長が会議初日に表明した)との姿勢もあり、日本も積極的に議論に加わることができた。

そのCMA(パリ協定締約国会合)で行われるルール作りは、2018年のCOP24までにその詳細を詰めることとなり、その進捗状況を確認するために2017年(COP23)でもCMAを開催することとなった。(途上国は全体として、毎年の開催を主張していたが、先進国側は進捗状況の確認程度であれば、特に必要なく、まずは中身の議論に時間もエネルギーも注力したうえで、2018年に再開すればいいという立場をとっていた。)また詳細な内容や追加的な事項については、パリ協定特別作業部会(APA)にて議論することと決められた。

今回、会議前のメディアやNGOの論調では、パリ協定実施のルール作りが主眼であるかのように述べられていたが、実際には、その”ルール作り”よりも今回のCMAでの議論のハイライトといえば適応基金の扱いだろう。京都議定書の下で合意され、GEF(地球環境ファシリティー)に事務局が置かれているが、京都議定書第2約束期間の発効が見込めないことと、パリ協定の実施が2021年から始まることを受け、小島嶼国や最貧国(特にアフリカ諸国)が「パリ協定の下での適応基金の活用を明示すべき」との姿勢を強く打ち出し議論が紛糾した。先進国サイドは、適応基金の重要性は認めるものの、支援については今後具体的な実施指針を交渉することになっているので適応基金の扱い(継続)のみを特筆することには躊躇した。結果、「パリ協定の下でも活用する」ことを再確認し、具体的な運用方法や制度設備について2017年3月までに各国がサブミッションを行い、その後APAなどでの議論を経て、COP24において決定を行うことで収拾した。来年のCOP議長国がフィジーになったことで、適応を主題の一つに掲げるモロッコとともに2017年はより適応色の強い交渉になるかもしれないと思われる。

もう一つは、今回の決定文書には含まれなかったが、各国のNDCの目標年が2025年と2030年が並立していることを受け、共通の目標年に関する指針など(先進国が反対する支援に係る事項は含まず)についてCOP23時の補助機関会合(SBI47)で検討を開始することが決められたが、こちらも今後、政治的な駆け引きが予想される。ただ、産業界の観点からは、政策の長期的な方向性を得られるという点で2030年が望ましいだろう。

(つづく)

by

島田 久仁彦 (しまだ くにひこ)

1975年生まれ。大阪府出身。国際ネゴシエーター。株式会社KS International Strategies CEO。経済産業省参事。同志社大学、アマースト大学を経て、2002年ジョンズ・ホプキンズ大学大学院国際学修士。国際情勢、環境・エネルギー問題の専門家。1998年より国連紛争調停官としてコソボ、東ティモール、イラクなどの紛争調停に従事。2005年から環境省国際調整官(2010年11月から2016年3月までは環境省参与)として、気候変動交渉で日本政府代表団リード交渉官と交渉議題の議長を歴任。2012年世界経済フォーラムYoung Global Leaders 2012に選出される。現在、CNN、BBC、France2など海外メディアに出演し、国際情勢、安全保障問題、環境・エネルギー問題などのコメンテーターを務めている。活動は安全保障・外交問題、エネルギー、環境問題にとどまらず多岐にわたる。主な著書に『交渉プロフェッショナル』(NHK出版)、『最強交渉人のNOをかならずYESに変える技術』(かんき出版)などがある。

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