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【緊急寄稿】止まらない恐怖の連鎖(トルコ・エジプトでのテロ攻撃)と世界の今後

止まらない恐怖の連鎖(トルコ、エジプトでのテロ攻撃)

2016年12月11日日曜日、世界は中東地域で起こった2件のおぞましい出来事に見舞われた。一つ目がトルコ・イスタンブールのサッカー競技場近くで起きた2件の爆弾テロ。最新の情報では40名が死亡し(警官隊と一般市民)多くが負傷した。一件目が警察車両に突っ込む形での爆弾テロで、2件目が自爆テロだったらしい。対ISの“前線基地”であり、長年にわたりクルド人勢力との“戦い”を行っているトルコだが、その代表的な都市、イスタンブールでの惨劇は、まだまだ事態が収まっていないことの表れとなった。対ISという観点では、ここではあえて詳しく述べないが、実際には「どちらの味方かわからない」ような態度を取っているがゆえに、ISに属する者たちが割に容易にトルコ国内とイラク・シリアのIS支配地を行き来できる状態であり、今回の犯行もIS分子によるものと言われるが、トルコは長年、クルド人勢力の廃絶に乗り出していることも事実で、それゆえにクルド人勢力によるテロ攻撃も相次いでいる。誰が行ってものであったとしても激しく非難されるべきことだが、そういったトルコの“現実”を私たちはどれほど知っているだろうか。親日国で、日本企業も積極的に進出している国であるので、実情をいち早く掴んでおくことは必須だろう(とはいえ、恐れすぎるのは、見事にテロを行う組織の狙いを叶えることになるので良くないことだ)。

トルコでの蛮行のニュースが世界中を駆け回る中、エジプト・カイロのキリスト教コプト派の中心的な教会も爆弾テロに見舞われ、伝えられているところでは少なくとも25名が死亡したとのこと。残念ながら、恐らく数は増えるだろう。イスラム教国であるエジプトでは、かねてよりコプト派への“攻撃”が何度も起こっているが、恐らくこれまでにない残忍な事件となったようだ。またこの教会は、現在の大統領であるシシ氏もクリスマスなどに訪れる場所でもあり、現政権への反抗勢力による仕業とも言われている。以前のアラブの春以降、エジプトの地域におけるリーダーシップ・ポジションは著しく低下しているが、さらに今回の事件により、統治が行き届いていないことが明るみに出たと言えるだろう。日本のニュースではあまり伝えられないが、エジプトもしっかりISの影響が及んでいる上、日常的に、規模こそ大きくないとされるが、ISおよびその分子による蛮行が横行している。(地図でエジプトの位置を見てもらえば、IS支配地域とされるシリア、イラク、レバノン、リビアなどをつなぐ戦略的な位置にあることがわかるだろう)

現在、中東・北アフリカ地域がどうしてここまで荒れるのか。理由はいくつも考えられるが、その最たるものは、オバマ政権の下、アメリカはこの地域の出来事にフルコミットしない、ことが明らかになったからだろう。シリアのアサド政権による迫害が伝えられた際、アメリカはred lineを提示したが、アサド政権側がそれを無視した際にも、本格的に介入することはせず、アサド政権側の蛮行を一層エスカレートさせたばかりではなく、ISなどの誕生の引き金となったと言える。また、その後、欧米による介入が起こった際にも、ISとアサド政権のシリアという2面への対応を選択したため、戦略的なフォーカスがはっきりしなったことも失敗の原因だ。そして、その“混乱”が、反アサド勢力、クルド人勢力、イラクにおけるシーア派とスンニ派の対立などに火を付けただけでなく、「誰が誰と戦っているのか」という図式をとても複雑なものにしてしまった。それゆえに、欧米諸国が“支援”という名のもと提供した武器弾薬が、転売され、巡り巡って自分たちに対して使われるというとてもおぞましい現実を生んでしまった。

これ以上悲劇が繰り返されないことを祈りたいが、現在の混乱を極めている状況に鑑みると、“落ち着く”のはまだまだ先のことだと思われる。

来年1月20日はトランプ政権がスタートし、欧州もリーダーシップを決める選挙が続く。2017年からスタートする新たなリーダーシップがいかにこの混乱の解決に臨むのか、注視しないといけない。そして最も大事なことは、物理的には日本は遠いように思われるが、この混乱による影響は決して我々とは無関係ではなく、大いに影響を受けることを理解しておく必要があるだろう。

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島田 久仁彦 (しまだ くにひこ)

1975年生まれ。大阪府出身。国際ネゴシエーター。株式会社KS International Strategies CEO。経済産業省参事。同志社大学、アマースト大学を経て、2002年ジョンズ・ホプキンズ大学大学院国際学修士。国際情勢、環境・エネルギー問題の専門家。1998年より国連紛争調停官としてコソボ、東ティモール、イラクなどの紛争調停に従事。2005年から環境省国際調整官(2010年11月から2016年3月までは環境省参与)として、気候変動交渉で日本政府代表団リード交渉官と交渉議題の議長を歴任。2012年世界経済フォーラムYoung Global Leaders 2012に選出される。現在、CNN、BBC、France2など海外メディアに出演し、国際情勢、安全保障問題、環境・エネルギー問題などのコメンテーターを務めている。活動は安全保障・外交問題、エネルギー、環境問題にとどまらず多岐にわたる。主な著書に『交渉プロフェッショナル』(NHK出版)、『最強交渉人のNOをかならずYESに変える技術』(かんき出版)などがある。

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