Kunihiko Shimada Official Blog 国際交渉人 島田 久仁彦公式ブログ

【最強交渉人の交渉術】(第3回)

これまで国際紛争から気候変動問題、企業のM&Aなど幅広い分野で交渉や調停の任に当たってきました。

また、各国で開催される交渉プログラムやリーダーシップトレーニングでも、実務家のインストラクターとして交渉術を教授してきました。

今回、私が学んできた内容の一部をシェアしたいと思います。

実際の最強の交渉術を身に着けたいと願う方は、エクセレントネゴシエーター養成講座も開催していますので、またご連絡いただければと思います。

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さて、今回は交渉にまつわる心理と影響についてのシリーズ第3回です。

少しでもお役に立てれば幸いです。

 


ポーカーをする方なら、fold (降りる)、call (乗る)、Raise (掛け金を上げる)という選択肢があることを知っているはずです。これらの選択肢をうまく使いながらゲームを戦うのがポーカーというゲームになりますが、まだ熟練していないプレイヤーは、相手プレイヤーがraiseすると、自動的に相手の手札が強いと思い込む傾向があることが分かりました。まるで掛け金と手札の強さに相関関係があるかのように思い込み判断を下し行動を起こします。この傾向を確かめるため、実際に私がインストラクターとして参加する交渉プログラムで、ポーカーを実践してみました。実際のゲームの様子を想像してみてくださいね。札が配られ、あなたは自分のカードが気にいったとして、最初のラウンドで少し賭けてみることにしました。すると対戦相手を務めた私がすぐに大幅なraiseをしたとしましょう。その場合、あなたは私の手札についてどう考えますか。これまで1000人ほどのケースを試してみたが、皆そろって「(目の前の対戦相手が)本当に強いカードを持っているのだと思う」と答えました。

そこで今度は同じ状況で、それぞれの立場を入れ替えてみるという試みをしてみました。例えば、カードが配られたら、あなたの手札は強いどころか、絶対負けないような手札だとしましょう。もし私がそこで賭ける(call)と言ったら、あなたはどう出るか。自らのカードの内容(絶対に負けないような手札)に即してraiseするでしょうか。普通に考えたら「もちろん!」となるはずなのですが、先ほどと同じtrainee達は「まさか、そんなことはしない」と答えました。あまりにも不思議に思ったため、彼らの“選択”の理由を尋ねると「自分がそこでraiseしたら強いカードを持っていると悟られ、あなたが賭けを降りてしまうかもしれないじゃないか。それよりは、何ラウンドもゲームに留まり、賭けを繰り返させて、掛け金の総額をできるだけ膨らませてから最後にかっさらいたいから、最初にraiseはせず、callだけにする」との答えが返ってきました。正直、私の理解を超えていました(まさに不可解でした)。

そこで、さらに状況を変えて、今度は負ける可能性はあるものの、それでもかなり強いと考えられるカード(手札)でプレイさせ、「今度はraiseするか」と尋ねても「しない」と答えてくるのです。ゲームを取り巻く状況をいろいろと変えてみても、どうもraiseはしてこないようなのです。皆、どれだけ素晴らしいカードが揃っていても、私が降りてしまうと困るから絶対にraiseはしてこない、というのが共通の反応でした。そこで「どうして、自分たちに強いカードが揃っていてもraiseしないのに、私がraiseしたら強いカードを持っていると思うのか」と尋ねてみたら、やっと皆、いかに自分が敵(相手)の視点でテーブルを見ることができていないか気付き始めたようです。彼らがポーカーの初心者ならまだしも、それぞれポーカーにはそれなりに自信がある人たちで、加えて私がインストラクターを務めるトレーニングプログラムを受けるために数十万円からコースによっては数百万円払ってくるような人たちなのですが、こんな基本的な概念さえも理解できていないようであることが分かり、呆然としたのを覚えています(とはいえ、毎年、同じ答えの繰り返しなのですが)。


次回をお楽しみに。

by

島田 久仁彦 (しまだ くにひこ)

1975年生まれ。大阪府出身。国際ネゴシエーター。株式会社KS International Strategies CEO。経済産業省参事。同志社大学、アマースト大学を経て、2002年ジョンズ・ホプキンズ大学大学院国際学修士。国際情勢、環境・エネルギー問題の専門家。1998年より国連紛争調停官としてコソボ、東ティモール、イラクなどの紛争調停に従事。2005年から環境省国際調整官(2010年11月から2016年3月までは環境省参与)として、気候変動交渉で日本政府代表団リード交渉官と交渉議題の議長を歴任。2012年世界経済フォーラムYoung Global Leaders 2012に選出される。現在、CNN、BBC、France2など海外メディアに出演し、国際情勢、安全保障問題、環境・エネルギー問題などのコメンテーターを務めている。活動は安全保障・外交問題、エネルギー、環境問題にとどまらず多岐にわたる。主な著書に『交渉プロフェッショナル』(NHK出版)、『最強交渉人のNOをかならずYESに変える技術』(かんき出版)などがある。

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