Kunihiko Shimada Official Blog 国際交渉人 島田 久仁彦公式ブログ

【最強交渉人の交渉術】第4回(最終回)

これまで国際紛争から気候変動問題、企業のM&Aなど幅広い分野で交渉や調停の任に当たってきました。

また、各国で開催される交渉プログラムやリーダーシップトレーニングでも、実務家のインストラクターとして交渉術を教授してきました。

今回、私が学んできた内容の一部をシェアしたいと思います。

実際の最強の交渉術を身に着けたいと願う方は、エクセレントネゴシエーター養成講座も開催していますので、またご連絡いただければと思います。

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さて、今回は交渉にまつわる心理と影響についてのシリーズ第4回(最終回)です。

少しでもお役に立てれば幸いです。


では、話をこのポーカーの状況から交渉のテーブルに戻してみましょう。ポーカーの持ち手は、交渉においては「交渉のポジションやスタンス」と置き換えてみればその類似性が分かるかもしれません。交渉のテーブルに就く前に十分調査分析し、準備万端で臨み、とても強い交渉ポジションと戦略ができていたとしても、仮に自分が強気で臨んで、交渉相手が席を立ってしまうことを恐れてしまい、せっかくのチャンスを生かしきれず、相手に付け込まれるというケースを何度も見てきました。そのくせ、相手が強硬な立場を取っているように見えると(明確な根拠が示されていないにもかかわらず)、「きっとしっかりと戦略が練られているに違いない」とか「相手は我々が知らないことをきっと知っている」と、勝手に思い込み、相手の張子の虎的な交渉ポジションに翻弄され、成果を総取りされるという失態も多く見てきました。(ここでは述べませんが、かつてのソビエト連邦の交渉官が使っていた常套手段です。恐らくロシアにおいても同じような交渉戦略が見て取れるかと思います)こういった状況に陥る原因は、先のポーカーの例で示したような心理状態ゆえではないでしょうか。

 

自分自身と距離を置き、目の前に広がっている現実を全く別の立場や角度から見るというのは、実際には本当に難しいことだと思います。しかし、自分が目の前の状況や相手のしぐさなどを見て感じ信じている“理解”が本当に正しいのか、別の視点から見て分析する姿勢は交渉において、結果の成否を左右する要素になります。「私が重要だと考えていることを、相手も同じく重要だと感じているとは限らない」「自分が見ているものを、相手も見ているとは限らない」といった推定に立ち、自らの“理解”や“視点”を敢えて「本当に適切か」疑ってみるのも有効な手段だと思います。また、同時に、自分の“実際に置かれている状況”を客観的に観察し、正しく理解することも不可欠です。私が実践する交渉術は、ツールボックスに詰まった様々なツールを使いますが、そこに「こういう動きをすれば、こういうことを言えば、こういう心理状態が生まれる」という交渉心理も巧みに用いながら実践する内容です。


 

いかがでしたでしょうか。少しは交渉における心理について見えてきたでしょうか。

交渉において大事なことは、テクニック(いわゆるツール)だけではなく、それぞれのツールやテクニックにまつわる心理とそれぞれへの対処の仕方を理解することです。ご関心がおありになれば、またエクセレントネゴシエーター養成塾でお目にかかれるのを楽しみにいたしております。

 

by

島田 久仁彦 (しまだ くにひこ)

1975年生まれ。大阪府出身。国際ネゴシエーター。株式会社KS International Strategies CEO。経済産業省参事。同志社大学、アマースト大学を経て、2002年ジョンズ・ホプキンズ大学大学院国際学修士。国際情勢、環境・エネルギー問題の専門家。1998年より国連紛争調停官としてコソボ、東ティモール、イラクなどの紛争調停に従事。2005年から環境省国際調整官(2010年11月から2016年3月までは環境省参与)として、気候変動交渉で日本政府代表団リード交渉官と交渉議題の議長を歴任。2012年世界経済フォーラムYoung Global Leaders 2012に選出される。現在、CNN、BBC、France2など海外メディアに出演し、国際情勢、安全保障問題、環境・エネルギー問題などのコメンテーターを務めている。活動は安全保障・外交問題、エネルギー、環境問題にとどまらず多岐にわたる。主な著書に『交渉プロフェッショナル』(NHK出版)、『最強交渉人のNOをかならずYESに変える技術』(かんき出版)などがある。

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