2月8日に配信されたWedgeの記事(http://wedge.ismedia.jp/articles/print/8832)に、「国連事務総長はお騒がせな人が多い」との記事が出た。2代目事務総長で、私も敬愛するダグ・ハマーショルド氏の事故死を“お騒がせ”の範疇に入れるのは違う気もするが、他に例示されている人たちは確かに晩節を汚している人たちばかりだろう。特に前任の潘氏は最悪だ。離任前から親族のスキャンダル問題が噴出し、帰国して大統領選への出馬を意図してみても全く支持が得られず、大統領選からの離脱を決めた。今や彼は“大”事務総長殿としての威光は、母国でも早くも失墜したのだ。その表れとして、今や検察が捜査に乗り出すという不名誉な状況が続いている。まさにとんでもなく、晩節を汚した例だろう。
ワルトハイム氏も事務総長としてはパッとしない人だったとの評価だが、良くも悪くも何もせず、無難に2期10年間、国連のトップとしての役割を果たした。しかし、記事にもあるように、実はナチスの支持者だったという事実が明るみに出てしまった。特に戦後、平和への願いと祈りを託した国連の事務総長という立場にあった人だからショックも大きかった。彼もとんでもないことになった。
しかし、ガリ氏とアナン氏への批判については、評価が分かれるだろう。ガリ氏は非常に巧みに大国間の融和を図り、国連外交を、前任のデクレアル氏とともに前に進めた功労者だ。事務総長としての評価は高くてよいと思う。ただ、身内のスキャンダルに足を引っ張られたことは確かだろう。アナン氏は、私自身が直接にお仕えしたので、仕事のすばらしさや人格、リーダーシップの質などについては全く疑いが生じないほど優秀な事務総長だった。他の事務総長が元外務大臣というようなプロフィールが多い中(現在のグティエレス氏は首相経験者)、唯一、国連のたたき上げのキャリア出身であり、システムをよく理解し、国連を最大限に機能させたと思う。私も紛争調停官という職務において、いろいろと画期的な取り組みも試させていただけた。しかし、その素晴らしいアナン氏も、身内のスキャンダルで晩節を汚されることとなったようだ。引退後も、さまざまなイニシアティブを率い、和平にも貢献したのだが、非常に惜しいことだ。
そのアナンさんから「国連事務総長というのは、モラルリーダーとしての役割を期待されている」と聞かされた。現役当時は、彼はまさにその通りのリーダーだったと思うが、最悪とされた潘事務総長の後任として、大きな期待を背負うグティエレス事務総長には、再度、潘氏によって崩されたリーダー像を取り戻し、国連を復活させてもらいたいと願っている。