クルド“独立”は希望への第一歩となるのか?
2017年9月27日
今朝飛び込んできたニュース(https://mainichi.jp/articles/20170927/k00/00m/030/070000c)では、9割を超す大多数のクルド人(注:イラク国内に在住する)が、「クルド人自治区(イラク北部)の独立」を支持するとの投票結果が出たとのこと。これが”空騒ぎ”にならないことを切に願う。
クルド人は、周辺国に散らばる「国家を持たない最大の民族」と言われるが、その長年の悲願が、投票上の数値では、叶えられることになる。
しかし、IS掃討作戦中のイラク国内での独立騒ぎは、ISを利するだけになりかねないし、クウエートやカタールもすでに対抗措置に出ている。トルコについては、長年の抗争もあって、すでにエルドアン大統領が「パイプラインの栓を閉じる」との実現性の高い脅しをかけている。非常にステークの高い賭けだ。
そして、さらに疑問なのは、この“住民投票”の有効性だろう。
Brexitの時の様に(後日、キャメロン前首相にとっては愚かな賭けだったことが明らかになったが)、政府が実施する国民投票であれば、その結果を受け入れる必要が出てくるが、今回の“住民投票”はあくまでも「クルド人のみ」を対象としており、イラク人を含む“イラク全土”での国民投票ではないからだ。その証拠に、すでにイラク政府は、この結果の正当性に疑問を呈し、受け入れない動きを取っている。
そして、また疑問なのは、「なぜ、あえて今なのか」ということ。
同じディアスポラとしての歴史を持つユダヤ人”国家”イスラエルは歓迎・支持の意向だが、一般的には、やはりこの情勢不安定な際に、新たな紛争の種となりかねないという懸念が大多数だろう。
イラクやシリアにおけるIS掃討作戦で勢いがついたので、その勢いを駆って“今”となったのだろうか。。。そして、IS掃討作戦で大活躍をしたのだから、そのご褒美に国家を!ということなのだろうか。
長年の念願である独立への第一歩は歓迎したいが、これが、これまで詰まっていた栓を抜き、新たな悲劇の第一歩とならないことを心より祈りたい。ただでさえ、今、国際情勢は混沌としており、中東・北アフリカ地域は、すでに対応しきれないほどの悲劇を抱えているのだから。