Kunihiko Shimada Official Blog 国際交渉人 島田 久仁彦公式ブログ

”グローバル”とは?

グローバルとは?

 

最近、教育現場、企業、政府機関など様々な場面で「グローバル化」の必要性、そして「グローバル人材の育成」の重要性が叫ばれる。

メディアにおいても他言語を操る人をもてはやす傾向が見られる気がするし、若い人たちの間で一種の憧れを形成することもある。

私も関わらせていただいている文部科学省のSuper Global High School (SGH)や、その大学バージョンであるSuper Global Universities (SGU)においても、いわゆる「グローバル人材の育成」を謳っている。

 

しかし、ここで一度立ち止まって考えたいのは、「グローバル」「グローバル化」そして「グローバル人材」とは、具体的にどのような内容を指すのだろうか。

 

よく耳にする説明を私なりにまとめると、短く言えば”欧米化”、もっと突っ込んで言うと”アメリカ化”であるように思われる。

私が携わる交渉という世界においても、どうもモデルはアメリカや欧州のロジックを立てて、言葉巧みに「ああ言えばこう言う」というスタイルを良しとしているように思われるし、企業におけるグローバルというのも、その眼はやはりアメリカや英国を含むヨーロッパで、アフリカやアジア、ラテンアメリカなどについては、「新たなフロンティアを開く」といったような視点が多いように思われる。

 

しかし、このままでは、21世紀はとても生きてはいけないだろう。

 

では”グローバル”とはどういうことだろうか。

 

私が考える”グローバル”とは、まず、しっかりと“ホーム”で活躍していることが基礎となる。その際の「ホーム」とは、自らの母国語であり、専門分野であり、そして自らが育った文化と言い換えることができる。また”得意分野”とも言えるだろう。グローバルの要件とは、ホームでしっかり通用するという条件をクリアした上で、ホーム以外の少なくとも二つのエリアや世界で通用することが必要となってくる。言語なら、少なくとも母国語以外の二つの言語が“きちんと使えないと”いけないし、専門分野なら、それ以外の二つの分野にも通じていないといけない。ここでいう”ホーム”は”ローカル”とも言い換えることができると考えるので、恐らく”グローバル”も、”マルチ・ローカル”とも言えるだろう。

話はすこし逸れますが、この条件に照らし合わせると、巷でよく聞く「グローバル企業」とはどのような企業だろうか。Journal of International Business Studies(JIBS)の定義を用いると、ホームでの売り上げが全体の売り上げの50%以下で、その他の2地域からの売り上げがそれぞれ2割以上を占めるという条件を満たすのが「グローバル企業」と仮定するとどうだろうか。日本企業を例にとると、恐らくトヨタ自動車などはその典型例に思える。しかし、ホーム=日本を含むアジア地域であるなら、アジア地域(ホーム)では47%、北米で約35%の売り上げをあげていますが、欧州では苦戦しており、売り上げの10%にも届いていません。日産やホンダなどの他の大手自動車メーカーも同じです。全業種で見た際、実はこの基準を満たしていた日本のグローバル企業は、ソニー、キャノン、そしてマツダでした。

では、「グローバル人材」とは、どのような人材を指すのでしょうか。

 

私は、それぞれに世界で通用する強みがあり、世界で万遍なく活躍できる人材を指す、というように定義しています。それぞれが、「絶対に誰にも負けない」という(仮に思い上がりでも)”ホーム・ローカル”を持ち、そのほかの2分野にもそれなりに精通していて、いろいろな方向やアプローチから”ものごと”を眺め、分析し、理解することができ、他に分かりやすく説明できる人材です。また、それが”ホーム言語”である母国語はもちろん、少なくとも他の2か国語でできるという人材を想像しています。

そんな人、本当に存在するのか?!とお思いになるかもしれませんが、私はこれまでのキャリアにおいて数多くお付き合いしています。

グローバル教育や人材育成の必要性が叫ばれる中(そして、私自身、この”グローバル”という言葉には、ちょっと食傷気味なのですが)、教育現場はもちろん。企業や政府機関などにおける今後の人材育成・研修などにおいて、”どのような要件が望まれるのか”を理解しつつ、語学研修やMBAのつまみ食いではない、総合的な戦略を形成し、微調整を加えつつ、どんどん”世界中どこでも通用する人材や能力”の育成をしていくべきだと考えますし、私もそのお役に立てればと思っています。

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島田 久仁彦 (しまだ くにひこ) 1975年生まれ。大阪府出身。国際ネゴシエーター。株式会社KS International Strategies CEO。経済産業省参事。同志社大学、アマースト大学を経て、2002年ジョンズ・ホプキンズ大学大学院国際学修士。国際情勢、環境・エネルギー問題の専門家。1998年より国連紛争調停官としてコソボ、東ティモール、イラクなどの紛争調停に従事。2005年から環境省国際調整官(2010年11月から2016年3月までは環境省参与)として、気候変動交渉で日本政府代表団リード交渉官と交渉議題の議長を歴任。2012年世界経済フォーラムYoung Global Leaders 2012に選出される。現在、CNN、BBC、France2など海外メディアに出演し、国際情勢、安全保障問題、環境・エネルギー問題などのコメンテーターを務めている。活動は安全保障・外交問題、エネルギー、環境問題にとどまらず多岐にわたる。主な著書に『交渉プロフェッショナル』(NHK出版)、『最強交渉人のNOをかならずYESに変える技術』(かんき出版)などがある。
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