日本式ビジネス交渉は最強のツールかもしれない
私の友人で世界を股にかけて非常にビジネスで成功しているリーダーから言われたことですが、日本人が交渉の際によく『前向きに考えます』「ちょっと社に帰って考えさせてください」「検討します」といった白とも黒とも言えない返事をしますが、あれは最強のビジネスツールだと思う、とのことでした。
意外でした。
私が欧米で仕事をする際によく日本人の交渉術を揶揄して、「決められないから相手にならない」とか「日本人ははっきりしない、なんでも曖昧にするからよくない」という評価を聞きます。日本で「日本人は交渉が下手だ」という際にも、必ずと言っていいほど挙げられる弱点です。私もそう考えていました。グローバルな基準で考えるとき(これが何かは別の投稿を見ていただければ幸いです)、日本人の“曖昧さ”はどちらかといえばマイナスとして捉えられていることのほうが多いと思いますが、実際には、交渉の現場で“脅威”であり“武器”だと捉えられていることもあるようです。
結論をあえて先延ばしにし、どうすべきか戦略を練り直す時間を稼いでいると考えられます。交渉の相手としては、その場で丁々発止のやり取りを行い、その場で白黒つけてほしいと願っているものですが、日本人はそうしないので、他国のビジネスリーダーから見ると、脅威にも映るそうです。
あくまでも一つの考え方・見方ということはできるかと思いますが、私はここに真の“グローバル”の神髄を見て取れると思います。
欧米や日本の基準に合わせることがグローバルなのではなく、本当に求められているのは、外国の文化や習慣を心から尊重しつつも、私たちがより自分たちらしくあることです。自分たちのローカルな良さをしっかりと身に着けることもとても大事です。特に、仏教でいう「不二」(ふに:物事は善か悪か、イエスかノーかという二元的な捉え方はせずに、何事もその間にある無限の異なる立場や考えを尊重すること)はグローバルなリーダーにとって大切な要素だと思います。これはいい、これは悪い、というような単純な割り方をするのではなく、多様な立場を尊重し、いろんなあり方や考え方に耳を傾けて理解するように努めたうえで、自分の信念を持つことが大事でしょう。私が行う紛争調停においても同じことが当てはまります。