日本時間5月9日未明、アメリカ・トランプ大統領は、前日にTwitterで宣言したとおり、イラン核合意からの離脱を決定したと発表した。
2015年にアメリカ・イランを含む6か国で合意された「イラン核合意」がもたらした約3年間の”安定”に終止符を打つ形となりました。
イランが行ってきた”工業用”ウラン濃縮を停止する代わりに、経済制裁を解除・緩和するという合意で、それを機に、フランス、ドイツ、英国、そしてアメリカの企業も、それぞれの政府を巻き込み、イランとの貿易関係の再構築と拡大に邁進しました。特に世界第1位、もしくは2位ともいわれる原油の埋蔵量を誇るイランですので、石油関連の事業が一気に拡大する道筋が描かれ、また欧米諸国との融和のシンボルとして、ボーイングおよびエアバスからの航空機の大量輸入契約も締結されていました。
今回のトランプ大統領による核合意からの離脱(一方的な)で、それらのディールは一気に縮小することになり、また原油価格も、原油の供給量が著しく減少するとの懸念から、1バレル=70ドルを超す高値を更新することになっています。また、先述のボーイング社などとの大規模なディールもご破算になる見込みです。
今のところ、欧州各国は、地政学的な利益と、そしてすでに築かれている経済的な利権を守るため、米国に追従することはなさそうですが、確実に国際経済にも暗い影を落としています。
また、イランも、現時点では、強い失望を表明しつつも、現在の合意に留まり、着々と合意の履行を続ける旨、表明していますので、大きな混乱はないと思いたいのですが、ロウハニ大統領も「欧米諸国の出方によっては、工業用のウラン濃縮を再開する」と表明しているため、かりにそちらに舵が切られた場合は、国際安全保障の不安定化は否めないでしょう。すでに「イランが核開発を再開するのであれば、我々も」とサウジアラビアの外相も表明していますし、イスラエルは公然と核保有国ですから、中東における核問題に直面することになります。核問題と言えば、今、北朝鮮にスポットライトが当てられていますので、今後、世界は中東地域と極東地域で、核問題に直面する可能性もあります。
目が離せない状況です。
イラン核合意をめぐる国際情勢について、私のメルマガで詳しく解説しております。
「最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』(http://www.mag2.com/m/0001682898.html)もご覧いただければ
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